「ウザイ」「キモイ」よりは…マシ?昔の子どもたちのはやしうた

教育や子どもの健全育成等に携わる人たちが集まると話題になるのが、子ども口から頻繁に漏れる、「ヤバイ」「ウザイ」「キモイ」「死ね」などのコトバについてです。
「ヤバイ」というコトバに関しては、もともとの「危ない」から派生し、「格好悪い」という意味で使われるようになり、さらに昨今では「カッコイイ」「スゴイ」という文脈でも使われるようになりました。
外国の方には、この「まったく真逆の意味合いを持つコトバ」の使い方、判断の仕方が難しいというような話もききます。
しかし、「代物」のように「素晴らしい品」という意味と、皮肉を込めて「粗悪品」という反対の両方の意味でつかわれるコトバもありますし、また、古語の「をかし」のように「滑稽・変」というもとの意味から、「趣がある」、ひいては、「美しい」「見事だ」という意味にも使われるコトバもあります。
「ヤバイ」「ウザイ」「キモイ」「死ね」など、反射的で短絡的なコトバばかりつかう子どもに対し、「もっと豊富な語彙力を持って欲しい」「うつくしい日本語をつかえ」などと苦言を呈す気持ちもじゅうぶん理解はできますが、コトバは“いきもの”であると同時に重要なコミュニケーションツール。
限られた時間で、自分の気持ちを伝え、相手の気持ちをも推し量るために、たとえ反射的かつ短絡的であっても、子どもたちが共通の言語で一瞬のコミュニケーションをすることをただ頭ごなしに否定するのはよくないのではないか、と私は考えています。
さて、この言語の話が、じつは手あそびにつながっていきます。
数十年まえの子どもたちのあいだで流行った「やじりうた」と呼ばれるものがあります。
当時の親たちも、この子どもの「やじりうた」にあまり好意的ではなく、子どもたちが街角でうたっていれば眉を顰めたであろうことも容易に推測できるのですが、それでも、あえて今回ご紹介したいと思うのは、この「やじりうた」の手あそびが、単純ながらも工夫があって面白いと感じられるからです。
やじりうたの歌詞はこんな感じです。差別用語的なコトバも含まれていたため、80年代以降からは語尾に変化が生まれています。
「あんた、ちょっと、みかけによらない、ごりらの、むすこ(むすめ)の七代目、はっきりいって、くるくるパーマ」
歌詞を読んだだけで、おおよそ推測はついたと思うのですが、まず、「あんた」は人差し指をたて、相手を指差します。この時点で「海外では人を指差してはいけない」とお小言をもらいそうですが、先をつづけましょう。
「ちょっと」は人差し指と中指、二本指を出します。チョキの「ちょ」ということですね。
「みかけに」でくすり指をプラスした三本指。「よらない」で小指をふくんだ四本指。
「ごりらの」で親指もふくめて手をパーの形に、「むすこ」で6になるようにもう片方の手のひとさし指をプラス。「七代目」で中指をふくむ七本指に。
「はっきりいって」、合計で8本になるよう、くすり指までふくめます。「くるくる」で小指もふくめて九本にし、指先を相手の前でくるくる回します。最後に「パーマ!」で両方の手をパーにし、相手の顔の前に広げます。
「やじりうた」は今風のコトバで言えば、「相手をディスる」手あそびです。でも、こんなふうに歌われたら、やじられた方もついつい笑ってしまうのではないでしょうか。
これはもしかしたら、陰湿な争いを避けるための、子ども同士の知恵なのかもしれない、と思い、こっそりご紹介させていただきました。